コラム

ビジネスモデルは変わるもの。私のサービス遷移

fundo編集部 ·
コラム 2026.07

ビジネスモデルは変わるもの。私のサービス遷移

いまのサービスは、突然この形で生まれたわけではありません。失敗と軌道修正を繰り返して、地続きで今の形になっています。今日はその変遷を、包み隠さず書いてみます。

この記事でわかること
  • 地方移住の「月給20万円」から新規事業提案に至った経緯
  • 「応援してくれる人」と「お金を出す人」は別人だという教訓
  • 成果報酬モデルがオペレーション崩壊を招いたメカニズム
  • 月額課金への切り替えで何が変わり、何が変わらなかったか

すべては「月給20万円」から始まった

きっかけは引っ越しです。地方への移住がほぼ決まっていた私は、当然のように現地の求人を調べました。

そして絶句しました。「HP制作、月給20万円」。冗談かと思いましたが、どのページをめくっても似たような数字が並んでいます。20万円がアッパーで、そこから先の成長曲線も見えない。

「でも地方は物価が安いから」とよく言われます。実際に住んでみた感想を言いましょう。そんなことはありません。

家賃は5万円。これはまあ安い。ですがラーメンは普通に1,000円しますし、野菜の値段は東京と変わりません。安いのは、たまにスーパーで見かける「見たことのない魚の刺身」が300円で売られていることくらい。謎の刺身では生活は成り立ちません。

月給20万円で、成長も見込めず、物価は東京並み。これは詰む。そう判断した私は、転職ではなく別の道を選びました。いま所属している会社に、新規事業を提案しよう——と。

制約条件が、事業を設計する

新規事業といっても、何でもいいわけではありません。私の状況から、条件は自動的に決まりました。

私の制約条件
  • 地方に住みながら活動できること
  • 他の地域にも横展開できそうなこと
  • リモートで東京の顧客にも対応できること

裏を返せば、この条件を満たすものなら何でもよかった。まずは地方の課題を掘り下げるところから始めました。「とりあえず話を聞かせてほしい」と、片っ端から声をかけたのです。

ここで面白い発見がありました。「東京から地方に来た人間」というストーリーは、想像以上に刺さります。アポは面白いように取れました。営業ツールとしての移住、です。

話を聞いて回るうちに、共通する課題が見えてきました。人口減少。そして「この地域ではビジネスが作れない」という、諦めに近い空気です。

そこで仮説を立てました。起業家や企業を支援して、まず「稼げる」という状態を作る。収入というライフラインさえできれば、人は地域に定着できる。定着した人が挑戦し、挑戦する文化が根付けば、地域は面白くなるんじゃないか——。

調査で見つけた「空白地帯」

市場調査と競合調査もやりました。起業家支援のサービスを並べてみると、奇妙な偏りがあったのです。

資金調達を支援するサービスはある。しかし、その後を伴走するサービスがほとんどない。

試しに資金調達系のサービスを1社使ってみましたが、正直、大した内容は作っていませんでした(サンプル1社の感想であることは申し添えておきます)。

なぜ「黒字化まで」を見るサービスがないのか。考えられる説は2つです。

  1. そもそもニーズがない
  2. ニーズはあるが、儲からない・スキル習得が難しい

もし後者なら、何とかなりそうな気がしました。私はこの説に賭けることにしたのです。

そして、何も売れなかった

こうして立ち上げたのが、成果報酬で事業計画書の作成を請け負い、その後の立ち上げまで伴走するサービスです。中小企業の新規事業支援も、10万円〜という価格で提案しました。「地方にはお金がない」と散々聞いていましたから、精一杯の配慮のつもりでした。

結果を先に言います。地方では、本当に何ひとつ結びつきませんでした。

誤解しないでほしいのは、反応が悪かったわけではないことです。「協力するよ」と言ってくれる人はたくさんいました。声もたくさんかけてもらえました。

ですが、ここで人生の重要な教訓を得ます。

教訓 その1

「応援してくれる人」と「お金を出してくれる人」は、まったくの別人である。

善意と財布は、別の場所についている。この壁を、私は地方では越えられませんでした。

ターゲットを変えたら、地獄の種類が変わった

サービスが悪いのか。それとも、ターゲットが悪いのか。

後者の可能性に賭けて、営業先をオンラインに切り替えました。起業家と投資家のマッチングサイト、クラウドファンディングの登録者、起業家が集まるコミュニティ。そこに片っ端から営業をかけたのです。

すると、どうでしょう。成果報酬を軸に、顧客がどんどん取れました。仮説は当たった——ように見えました。

ここからが本当の地獄でした。

成果報酬は「玉石混合」を連れてくる

成果報酬というモデルには、顧客を集める力があります。ただし、玉石混合の顧客を集めます。

スクリーニングはしました。面談もしました。それでもわからないことは山ほどあります。

実際に起きたこと

成果報酬でうまくいかなかったら、逆に「金を払え」と請求してきた顧客がいました。事業計画書を作り、資金調達まで成功したのに、お金を払わずに消えた人もいました。

撤退軸のない成果報酬は、無償面談を無限に生む

そして、私自身の設計ミスもありました。撤退軸を設けなかったことです。

成果報酬モデルでは、成果が出るまで売上はゼロ。それなのに、起業に関する面談だけは延々と発生します。しかも「どこで切るか」が構造的に曖昧なので、お金を払わない顧客だけが静かに増え続けるのです。

気づけば、常時40人ほどの顧客を抱えていました。売上は、それに比例していません。走りながらオペレーションを改善しようとしましたが、無理でした。これがオペレーション崩壊というやつか、と妙に冷静に思った記憶があります。

教訓 その2

成果報酬を設計するなら、撤退軸をセットで決めておく。

「いつ、どの状態になったら支援を終了するか」を決めないまま走ると、売上ゼロの稼働だけが積み上がります。

月5万円という名の「ふるい」

ここで2つの軌道修正をしました。そのひとつが、顧客が離れることを覚悟で、月5万円をいただくことにしたことです。

結果はどうなったか。顧客はもちろん減りました。想定どおりです。

想定外だったのは、月5万円ですら入金しない人が普通にいたことです。入金消込にやたら時間を食われました。顧客の「質」が上がったかと聞かれると……うーん、ちょっとは上がったかもしれない、くらいの歯切れの悪い答えになります。

ですが、確実に変わったものがあります。

課金で変わったこと

サービス品質は、明らかに安定しました。40人の面談に追われながら片手間で回すサービスと、対価をいただいた顧客に腰を据えて向き合うサービス。どちらの品質が高いかは、言うまでもありません。

遷移の全体像

ここまでの流れを、1枚の表にまとめるとこうなります。

フェーズ モデル・打ち手 結果
① 地方×成果報酬 成果報酬で事業計画書+伴走。中小の新規事業支援は10万円〜 協力者は多数、受注はゼロ
② オンライン×成果報酬 マッチングサイト・クラファン登録者・起業家コミュニティへ営業 顧客は取れたが玉石混合。撤退軸がなく常時40人でオペレーション崩壊
③ 月額課金へ転換 月5万円の課金を導入(顧客離脱は覚悟の上) 顧客は減少、品質は安定。入金消込という新たな課題も
④ 現在 成果報酬の残し方を調整し、現行サービスへ 今後も変える余地あり

ビジネスモデルは、変わり続けるもの

その後も「成果報酬はどう残すか」といった調整を重ねて、いまのサービスに至っています。今後も変える余地は大いにあります。

振り返って思うのは、最初の設計が正解である必要はない、ということです。

  • 地方で売れなければ、ターゲットを変える
  • 成果報酬で崩壊すれば、課金モデルを変える
  • それでも歪みが出れば、また変える

謎の刺身300円の街から始まったこのサービスは、失敗のたびに形を変えて、まだ続いています。ビジネスモデルは変わるもの。むしろ、変えられることこそが、小さく始めた事業の最大の武器なのだと思います。

NEXT STEP
ビジネスモデルの見直し、ひとりで悩んでいませんか

「顧客は集まるのにお金にならない」「価格の付け方を間違えた気がする」——この記事の失敗は、そのまま誰かの近道になるはずです。同じ轍を踏む前に、一度話してみませんか。

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