これから起業するきみへ
これから起業するきみへ
起業すると決めた理由はなんだった? お金持ちになりたい、地域の人口減少を止めたい、業界の悪い慣習を正したい。なんでもいい。理由に強い・弱いはない。ただ、その理由だけは、忘れないでほしい。
- 起業する理由は、うまくいかない時にあなたを支えてくれる。忘れないでほしい
- ビジネスは理由がなければ動かないフラットな場所。中小企業・個人事業主相手には強いカルチャーショックがある
- 成果報酬契約の相手に4時間怒鳴られた話、営業代行で逆ギレされた話——お金も信用も、思うようには手に入らない
- 経営者になった瞬間、信用はゼロより低いところから始まる。乗り越えるのは実績の積み重ねだけ
- 質より量と言われても、体だけは大切に。寝る、食べる、相談できる人をつくる
- どうしても苦しくなったら、いつでも連絡してほしい
お金持ちになりたい。地域の人口減少を止めたい。業界の悪い慣習を正したい。理由はなんでもいい。強い理由も弱い理由も、優劣なんてない。ただ、その理由だけは忘れないでほしい。
そして、うまくいかない時に寄りかかれるようなものだと、なおいい。「自分が自分であるために、これをやっているんだ」——ここまで言い切れるのであれば、その理由はきっと、あなたを支えてくれる。
ビジネスは、良くも悪くもフラットな場所だ
ビジネスの基本は単純だ。理由がなければ、人は買わない。そしてこの仕事を続けていくうちに、あなたは世の中の広さ——いや、広さというより「濃さ」を、知ることになると思う。
魑魅魍魎。そう言ってもいいかもしれない。
特に、中小企業や個人事業主、個人の方を相手にするとき、今まで見てきた世界はなんだったんだ、というくらいのカルチャーショックが起きると思う。とりわけ、扱う金額が小さいサービスほど要注意だ。今まで比較的いい環境で暮らしてきた人も、そうでなかった人も、いろいろいる。ただ、世の中にここまで悪意——本人にそのつもりがなくても——が転がっているとは、正直、思っていなかった。
暗黒大陸。そう呼んでもいいと思う。
電話口で4時間怒鳴られた夜
私は、成果報酬型のサービスを契約してもらっていたお客様に、電話で4時間怒鳴られたことがある。
すごいのはここからだ。契約はしてもらったものの、事業計画書作成のサービスで、そのお客様からは何も依頼が来ていなかった。ある日、MTGが重なっていて電話に出られなかった。契約にはない、ちょっとした頼み事をしたかったらしい。それを断ると——
「こっちは客だ。何社も紹介してやろうと思っていたのに、その態度はなんだ。謝罪しろ」
この一点張りだった。21時にかかってきた電話は、25時にようやく解散した。妻はずっと深刻な顔をしていた。「もうやめたら」と言われた。
「紹介できるから」で頼んだ営業代行の顛末
同じような方に、営業代行をお願いしたこともある。「たくさん紹介できるから、うちにサービスを売らせろ」と言われたからだ。
初月こそ、ギリギリ支払うフィーを上回るくらいの紹介があった(といっても、粗利としてはゼロだった)。もっと紹介できると言っていたが、翌月以降、紹介はぱたりと止まった。
契約を切ろうとしたら、今度は逆に切れられた。
「なんでだ。紹介できる。今月は忙しかっただけだ」
こんな調子である。きっと、これよりひどい例もたくさんある。
お金は、思うようには返ってこない
借りたお金は、返ってこないことがある。入金は、連絡しなければされないし、連絡してもされないかもしれない。
これが一件なら、まだいい。「そんなの対処できるだろう」と思うかもしれない。これが複数重なったところを、想像してみてほしい。こういうことは、余裕がない時ほど、拍車がかかるものだ。
共同創業について
共同で起業するのは、いいことのように聞こえる。
でも、うまくいっているケースを、私はほとんど見たことがない。事業としてだけでなく、友人関係としても、うまくいかなくなることが多い。
質より量、それでも体は大切にしてほしい
「質より量だ」という経営者は、たくさんいる。ある種、事実だとも思う。
ただ、私は、体だけは本当に大切にしてほしいと思っている。できる範囲でやるしかない。短距離走じゃない。長く戦うための競技だからだ。
たくさんは眠れないかもしれない。それでも、寝る。食べる。相談できる人をつくる。これだけは、やってほしい。
もし、本当に苦しくなったら
大きな声では言えないけれど、どうしても大変になったら、メッセージをくれてもいい。相談できると思ったら、連絡してほしい。費用はいらない。すぐには時間が取れないかもしれないが、ちゃんと声を聞きたいと思っている。
私の周りには、亡くなった経営者もいるし、働きすぎて脳梗塞になった人もいる(幸い、命は助かって、今も仕事を続けているけれど)。
なので——理由を、忘れないでほしい。うまくいかない日があっても、それはきみのせいだけじゃない。世の中には、そういう場所があるというだけだ。無理をしすぎず、長く、自分の理由と一緒に歩いていってほしい。
——秋田から、これから起業するすべての人へ
追記:信用は、ゼロより低いところから始まる
経営者になった。そうなった瞬間から、周りには「社長」と呼ばれるようになる。地方で起業すれば、商工会や、地元の集まりにも呼ばれると思う。
しかし、信用は本当にない。
とんとん拍子で進んでいた商談が、突然、理由もわからず終わることがある。金融機関から思うように調達ができない。口座すら作れないことだってある。協業しようとしていた会社から、「実績がない(つまり信用がない)から組めない」と言われる。
おそらく、ビジネスをやったことがない人には経験しない感覚だと思う。
これを乗り越えるのに一番効くのは、やっぱり実績だ。時間がかかってもいい。とにかく数字をつくることが一番である。
断られた瞬間は、「こいつを呪ってやる」と思うかもしれない。でも、実績ができてから同じ相手に会うと、あの渋られた感触がまるっきり変わっているのに気づく。
これが、信用。
毎回100点を出す必要はない。60点でも、続けることが大事だ。
私も、銀行と協業をしようとしたとき、大したことのないプランを出していた隣の会社に、仕事を持っていかれたことがある。私の話は、「はいはい」と受け流された。
そこから実績を積んで、別の銀行と話した。今度は、前向きな返答をもらえた。自分を見る世界が変わった気がした。
最初に相談した銀行には、今も声をかけていないし、これからもかけないと思う。
どうしても大変になったら、連絡してください
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本記事は、fundo代表・須田の実体験に基づく個人的なエッセイです。登場するエピソードはすべて実際の出来事ですが、特定の個人・企業が識別されないよう、細部を一部調整しています。