なぜ「値段の安さ」で勝負すると死ぬのか
新規開業の相談を受けると、ほぼ全員が「他社より安く設定したい」と言う。「最初は集客が大事だから」「実績を作りたいから」── 理由はそれぞれだ。
けれど私は、これがほぼ死亡フラグだと確信している。2,000人の起業家を見てきて、安さで勝負を始めた人で5年生き残った人を、ほとんど思い出せない。一方、業界平均より高い価格でスタートした人は、半分以上が5年以上続いている。この差は偶然ではない。
1. 安さに釣られる客は、安さに離れる
これが最も大きな問題だ。価格で集まった顧客のLTV(顧客生涯価値)は、本当に低い。理由はシンプルで、もっと安い競合が現れた瞬間、即離脱するからだ。
例えば月¥3,000の美容室と月¥5,000の美容室。前者は¥2,500の店ができれば客が流れる。後者は¥4,000の店ができても、簡単には流れない。「安いから来た」客と「価値で来た」客は、別の生き物だ。創業期に集めるべきは後者なのに、安さで勝負すると前者しか集まらない。育てる意味がない顧客層に時間を奪われる。
2. 値下げ余地がない、というハンデ
安い値段で始めると、それより下げられない。これがオペレーション上の致命傷になる。新規キャンペーンを打ちたいとき、繁忙期前にプッシュしたいとき、企業向けに法人プランを作りたいとき── 「値下げカード」を切れないと、できる施策の幅が極端に狭まる。逆に高めで始めた店は、いつでも値下げできる。これは経営上、巨大な余裕になる。
3. 大量オペレーションで創業期が破綻する
安いということは、大量に売る必要があるということだ。月¥10,000の事業を売上¥100万円にするには10件で済むが、月¥2,000なら50件必要だ。創業期、1人または少人数で50件のオペレーションは破綻する。「安く・たくさん」のビジネスは、最初から組織が必要になる。これを個人で始めるのは、ほぼ自殺行為だ。
逆の発想:業界平均より高くスタートする
私の推奨は明確だ。業界平均より2-3割高い価格で始める。それでも来るのは、本気で価値を感じてくれる顧客だけ。少数だが、長期的に育つ。
「価格を上げると客が来ないのでは」と心配する人が多いが、安心していい。安い店に来る客の99%は、最初から高い店には来ない。価値で選ぶ層と、価格で選ぶ層は分離しているのだ。あなたがやるべきは、価値で選ぶ層に振り切ることだ。
創業期の価格戦略を間違えると、3年で消える。逆に最初に高めの価格を設定できた人は、その後も健康な経営を続けられる。価格は、事業の体質を決める。最初の価格を、慎重に決めてほしい。