ブログ 中小企業

【資金調達】措置期間と利子補給

fundo編集部 ·
資金調達

「据置期間」と「利子補給」は、名前の響きが似ているだけでまったく別の制度です。前者は元金を返す時期の話、後者は利息を誰が負担するかの話。この2つを混同したまま金融機関に相談に行くと、担当者に「制度を理解していない人」だと思われます。仕組みと、実際に使うべきかどうかの判断基準を、数字付きのシミュレーションで整理します。

POINT
  • 据置期間は「元金の返済を待ってもらう」制度。利息だけは払い続ける。返済期間そのものが延びるわけではないため、後ろの負担が重くなる
  • 利子補給は「利息を国や自治体が肩代わりする」制度。公庫の融資そのものには原則付かず、自治体の制度融資に付帯していることが多い
  • どちらも「借りやすくする」制度ではなく、「返済負担の置き場所を動かす」制度でしかない
  • 据置期間を長く取りすぎると、次に追加融資を申し込むときに「元金の返済実績がない」と見られ、審査で不利になることがある
  • 利子補給の多くは後払い(還付)方式。申請を忘れると対象外になり、資金繰り上のタイムラグも発生する

据置期間とは何か

据置期間とは、返済期間のうち元金は返済せず、利息だけを支払う期間のことです。たとえば「返済期間8年・据置期間1年」という条件であれば、最初の1年は利息のみを払い、残り7年で元金と利息をあわせて返済します。

誤解しやすいポイント

据置期間は「返済を先延ばしにする」制度であって、「完済までの期間を延ばす」制度ではありません。「返済期間8年、据置1年」なら、完済までの期限はあくまで8年のままです。「9年かけて返せばいい」という解釈は誤りで、据置後の7年間で元金を返しきる必要があります。

据置期間の上限は融資制度ごとに決まっています。おおまかな目安は次のとおりです。

制度据置期間の目安
日本政策金融公庫・一般貸付(運転資金)1年以内
日本政策金融公庫・一般貸付(設備資金)2年以内
日本政策金融公庫・新規開業/スタートアップ支援資金5年以内
自治体の制度融資自治体・資金メニューごとに個別設定

ただし、これは「上限」であって「希望すれば必ず通る」という話ではありません。据置の有無・長さは、事業計画の内容や融資額、返済期間全体とのバランスから、最終的に金融機関側の判断で決まります。

据置期間は使うべきか

結論から言うと、「据置期間を使えば得をする」という単純な話ではありません。据置期間中は元金が減らないため、総返済額(総利息)は据置なしの場合より必ず増えます。据置期間は「今のキャッシュを守る代わりに、あとで少し多く払う」という取引だと理解してください。

据置を検討したほうがいいケース
  • 創業直後で、売上が安定するまでに半年〜1年程度かかる見込みがある
  • 季節性が強い事業で、繁忙期の入金までにタイムラグがある
  • 大型の設備投資で、稼働・収益化までに一定の準備期間を要する
気をつけたいケース:近いうちに追加融資を考えている場合。据置期間中は元金がまったく減らないため、「返済実績」が積み上がりません。追加融資の審査では返済実績が重要な判断材料になるため、据置を長く取りすぎると、かえって次の調達のハードルを上げてしまうことがあります。
気をつけたいケース:据置終了後の負担増を、資金繰り表に織り込んでいない場合。据置が終わった瞬間に月々の返済額が一段階跳ね上がります。この「崖」を事前にシミュレーションしていないと、据置が終わった月に資金繰りが急に苦しくなります。
fundoの結論:据置は長めに取っていいか

据置は基本的に長めに取っておいて構わない、というのがfundoの立場です。据置を短く取って早々に資金繰りに詰まるより、選択肢を残しておくほうが安全だからです。ただし「取れる上限まで、とりあえず取っておく」という思考停止には賛成しません。多くの制度では据置期間も返済期間に含まれるため、長く据え置くほど、据置が終わったあとの返済ペースはその分だけ急になります。長めに取るなら、据置が終わった瞬間に月々いくら払うことになるかを先に計算し、その金額を無理なく払える見通しが立ってから決めてください。据置は保険であって、判断を先送りするための制度ではありません。後半の実例で、同じ1,000万円の借入でも据置の使い方次第で結果がどう変わるかを比較します。

利子補給とは何か

利子補給とは、金融機関から借りた融資の利息の一部または全部を、国や自治体が肩代わりする制度です。よく補助金と混同されますが、仕組みは別物です。

補助金利子補給
返済義務なし(返済不要)あり(元本は通常どおり返済)
対象設備費・広告費などの経費融資の利息部分のみ
受け取りのタイミング交付決定後にまとめて多くは利息を払ったあとに還付

ここで実務上おさえておきたいのは、日本政策金融公庫の融資そのものには、原則として利子補給は付いていないという点です(コロナ禍の特別利子補給のような、国の政策による特例を除く)。一方で、都道府県や市区町村が実施する「制度融資」「融資あっせん制度」には、利子補給や信用保証料の補助が付帯しているケースが多くあります。

実例|自治体の利子補給の仕組み ある地方自治体の中小企業融資あっせん制度では、利子補給が受けられる金融機関を数行の指定金融機関に限定し、かつ「あっせん申込みの前に、利子補給の事前確認・事前協議を済ませておくこと」を条件にしています。先に融資を実行してしまってから利子補給を申請しても、対象外になる場合があります。

利子補給は使うべきか

使えるなら使わない理由はありません。ただし「使えるかどうか」を見誤ると、時間をかけて動いた末に対象外だったという事態になりかねません。事前に必ず確認すべき項目を整理します。

申し込み前に確認すべきこと
  • 利子補給の対象となる金融機関が、指定された数行に限定されていないか
  • 融資実行前の「事前協議・事前確認」が必須になっていないか(後からの遡及申請は不可のケースが多い)
  • 他の利子補給制度(国の特別利子補給など)と重複して利用できるか
  • 申請の手間(年1回の実績報告など)に見合うだけの削減額になっているか
  • 還付のタイミングが、資金繰り表の入金予定と整合しているか
実務上の注意:利子補給は「先に通常どおり利息を払い、あとから一部が還付される」方式が多いです。申請を1年分まとめて年1回受け付ける制度も一般的なので、還付を資金繰りの当てにしすぎると、実際の入金までのタイムラグで資金がショートすることがあります。

実例とシミュレーション

ケース1:据置がうまくいった例|あきた食品工房・畠山さん(農産物加工業)

畠山さんは、漬物類の加工設備を新設するため、日本政策金融公庫から1,000万円を借り入れました。新しい出荷ルートが安定するまで半年〜1年はかかる見込みだったため、据置期間2年を選択しました。条件は「金利年2.0%・返済期間10年(据置含む)・元金均等返済」と仮定して比較します。

据置なし据置2年
1〜24ヶ月目の月々返済額約10.0万円(元金+利息、徐々に減少)約1.7万円(利息のみ)
25ヶ月目以降の月々返済額約9.5万円前後で推移約12.1万円からスタートし、徐々に減少
総利息(10年間)約100.8万円約120.8万円
総返済額約1,100.8万円約1,120.8万円

借入残高の推移(据置2年・元金1,000万円)

経過年数借入残高状態
実行時1,000万円
1年目末1,000万円据置中(利息のみ支払い)
2年目末1,000万円据置終了。まだ元金は1円も減っていない
3年目末875万円元金返済スタート
4年目末750万円順調に減少
6年目末500万円順調に減少
8年目末250万円順調に減少
10年目末0円完済
この比較から分かること

据置2年を選んだことで、事業が軌道に乗るまでの2年間は月々の負担を約8万円軽くできています。その代わり、総利息は約20万円増え、据置が終わった25ヶ月目からは据置なしの場合より月々の負担が重くなります。畠山さんのケースでは、出荷ルートが安定する見通しが立っていたため、この「あとで返す」トレードオフは合理的な選択でした。残高が2年間フラットな期間があっても、据置終了後は着実に減っていることがポイントです。

ケース1’:据置を延ばしすぎて失敗した例|羽後精密・佐伯さん(精密部品加工業)

佐伯さんも同じく1,000万円を借り入れ、新しい加工機を導入しました。「据置は上限の5年近くまで取れるなら、取っておいたほうが得だろう」と考え、据置期間4年を選択しました(条件は畠山さんと同じ、金利年2.0%・返済期間10年(据置含む)・元金均等返済と仮定)。

ところが実際には、設備は据置1年目から稼働し、据置2年目にはほぼ黒字化していました。それでも「据置中だから」と元金の任意返済はせず、手元資金はそのまま据え置いていました。据置3年目、事業拡大のために追加の運転資金を申し込んだところ、「本融資の元金返済実績がゼロであること」が響き、希望額どおりの増額は認められませんでした。

経過年数借入残高状態
実行時1,000万円
1年目末1,000万円据置中(設備はすでに稼働)
2年目末1,000万円据置中(実質黒字化)
3年目末1,000万円追加融資を申請するも増額不可
4年目末1,000万円据置終了。ここまで4年間、元金は0円のまま
5年目末約833万円返済額が急上昇してスタート
7年目末約500万円
10年目末0円完済
何が問題だったか:事業自体は据置2年目には順調でした。問題は「据置が使えるから使う」という判断で、事業の実態に据置の長さを合わせなかったことです。据置が終わった5年目の返済額は、畠山さんの据置2年のケース(約12.1万円スタート)より大きい約15.6万円からスタートします。据置を長く延ばすほど、据置後の返済ペースはより急になるからです。さらに、元金の返済実績がゼロのまま3年目を迎えたことで、必要なタイミングでの追加融資を取り逃しました。据置期間そのものは間違いではなく、目的なく上限まで延ばしたことが失敗の原因です。

ケース2:利子補給|大町工業・木村さん(金属加工業)

木村さんは、秋田市内で金属加工業を営んでおり、運転資金500万円を、市の融資あっせん制度(利子補給付き)を使って借り入れました。仮に「金利年2.0%・返済期間7年・元金均等返済」、利子補給を「年0.5%相当、対象期間5年」と仮定して計算します。

利子補給なし利子補給あり(仮定)
7年間の総利息約35.4万円約35.4万円(支払い自体は同額)
還付される概算額約8万円(対象期間5年分)
実質負担利息約35.4万円約27万円前後
※上記の利子補給率・対象期間・還付額は、仕組みを理解するための仮定値によるシミュレーションです。実際の補給率・上限額・対象期間は自治体・年度・利用する融資メニューによって大きく異なります。木村さんのように事前確認を済ませたうえで進めるようにしてください。

実行前のチェックリスト

据置期間・利子補給を検討する前に
  • 資金繰り表で、据置終了後に返済額が跳ね上がる月の資金繰りを試算したか
  • 据置を使うことが、次に予定している追加融資の審査にどう影響するか、担当者に確認したか
  • 利子補給の対象金融機関・対象資金の種類が、自分の借入予定と一致しているか
  • 利子補給の事前協議・事前確認の締め切りに、融資実行日が間に合うスケジュールになっているか
  • 利子補給の還付タイミング(申請月・入金月)を資金繰り表に反映しているか
Q据置期間と利子補給は同時に使えますか?

制度としては別の話なので、両方を組み合わせて使えるケースは普通にあります。据置期間は元金返済のタイミングの話、利子補給は利息を誰が負担するかの話なので、それぞれの条件さえ満たせば両立します。

ただし利子補給付きの制度融資は対象金融機関や資金使途が限定されていることが多いので、まずは利子補給の対象要件を先に確認し、その枠内で据置の相談をするほうが手戻りが少なくなります。

Q据置期間はあとから延長できますか?

契約時に決めた条件をあとから変えるのは「条件変更(リスケジュール)」にあたり、金融機関・信用保証協会双方の合意が必要になります。資金繰りが厳しくなってから急に相談しても、必ず通るとは限りません。

最初の申し込み時点で、多少余裕を持たせた期間を設定しておくほうが現実的です。

Q利子補給の申請を忘れたら、あとから遡って受けられますか?

制度によりますが、多くの自治体は「融資実行前の事前協議・事前確認」を条件にしています。借りたあとに気づいても対象外になるケースが多いため、申し込み前に必ず自治体の商工担当窓口に確認してください。

NEXT STEP
据置期間・利子補給、自社の場合はどう組むべきか

制度の名前を知っていることと、自社の資金繰りに合わせて条件を組めることは別のスキルです。据置の長さ、利子補給の対象条件、追加融資への影響まで含めて、無料相談で一緒に整理します。

無料で相談する
相談は無料です。まずは現状の借入条件からお聞かせください。
※本記事の「あきた食品工房・畠山さん」「羽後精密・佐伯さん」「大町工業・木村さん」は、解説のためにfundoが作成した架空の事例です。実在の人物・企業とは関係ありません。
※記事中の金利・据置期間の上限・利子補給率・返済額などの数値は、仕組みを理解するためのシミュレーションに基づく仮定値です。実際の融資条件は、金融機関・自治体・年度・利用する制度によって異なります。申し込みの際は、必ず取扱金融機関または自治体の担当窓口で最新の要綱をご確認ください。
fundo Content Map

すべてのコンテンツ

fundoが提供する5種類の読み物コンテンツと、4つのサービスメニュー。