資金繰り表の作り方【テンプレ付き】
資金繰り表の作り方|スプレッドシートにそのまま貼れるテンプレと、数値の作り方まで
資金繰り表は「作り方が分からない」ではなく、「行の項目は作れたが、中に入れる数字の作り方が分からない」で止まる人がほとんどです。この記事では、スプレッドシートのA列にそのまま貼れる25行のテンプレートと、予算(計画値)の作り方・実績の入力の仕方・残高がいくらを切ったら動くべきかまで、運用の全手順を解説します。
- 資金繰り表のフォーマットは全業種共通。業種で変わるのは「入金と支払のタイミング」だけ
- テンプレは25行固定。A列に貼り付け→数式6本入力で完成(所要5分)
- 予算の数値は「売上予測」を「入金予測」に変換するところから作る。ここを飛ばすと表が嘘をつく
- 実績は通帳ベースで月初10分。予実の差が10%を超えた項目だけ原因を見る
- 売上をどう作るか(営業計画)は資金繰り表の仕事ではない。別で作る
資金繰り表とは何か。損益計算書と何が違うのか
資金繰り表は、「現金がいつ入って、いつ出て、月末にいくら残るか」だけを追う表です。利益を計算する表ではありません。
損益計算書(PL)との違いは1点だけです。PLは「売上が確定した月」に売上を計上しますが、資金繰り表は「実際にお金が口座に入った月」に計上します。支払も同じで、PLは費用が発生した月、資金繰り表は実際に払った月です。
この差が命取りになります。3月に100万円の仕事を納品しても、入金が5月なら、資金繰り表の3月の収入は0円です。一方で外注費や材料費は先に出ていく。PL上は黒字なのに口座残高が減り続ける、いわゆる黒字倒産はこのズレで起きます。倒産する会社の多くは赤字だから潰れるのではなく、払う日に現金がないから潰れます。
内装工事業・三浦さん(架空の事例)の初年度がまさにこれでした。開業4ヶ月目、月の受注は300万円を超え、通期でも黒字ペース。しかし元請けからの入金は「月末締め・翌々月末払い」、つまり売上の2ヶ月後。一方で職人への外注費は当月末払い、材料費は現金仕入れ。
売上が伸びるほど「先に払う金」が膨らみ、6ヶ月目に残高が40万円を切りました。受注を増やしたのに現金が減る——資金繰り表を作っていれば、このズレは3ヶ月前に数字で見えていたはずです。三浦さんはこの月に初めて資金繰り表を作り、翌月、公庫に運転資金を申し込みました。残高が尽きる前に動けたのは、表を作って「あと何ヶ月もつか」が計算できたからです。
創業融資の審査でも、資金繰り表(または月次の収支計画)は事業計画書とセットで見られます。「作れる人=お金の管理ができる人」という評価がつくので、融資を考えているなら申込前に作っておくのが正解です。
テンプレート:スプレッドシートに5分で作る
フォーマットは25行固定です。業種によってテンプレを変える必要はありません。飲食でも建設でもECでも、現金の動きは「入る・出る・残る」の3つしかないからです。業種で変わるのは中に入れる数字のタイミングだけで、それは次章で扱います。
手順1:A列に項目を貼り付ける
下のブロックを丸ごとコピーして、スプレッドシートのセルA1を選択して貼り付けてください。改行区切りなので、A1〜A25に縦一列で入ります。
資金繰り表 月 前月繰越 【経常収入】 現金売上 売掛金回収 その他収入 経常収入 計 【経常支出】 仕入・外注費 人件費(役員報酬・給与) 家賃・地代 水道光熱・通信 広告宣伝費 支払利息 その他経費 税金・社会保険 経常支出 計 経常収支 【財務】 借入による調達 借入返済(元金) 財務収支 当月収支 翌月繰越
手順2:B列(1ヶ月目)に数式を6本入れる
B2に「1月」など最初の月を入れ、以下の6本の数式をそのまま入力します。
| セル | 数式 | 意味 |
|---|---|---|
| B8 | =SUM(B5:B7) | 経常収入の合計 |
| B18 | =SUM(B10:B17) | 経常支出の合計 |
| B19 | =B8-B18 | 経常収支(本業でいくら残ったか) |
| B23 | =B21-B22 | 財務収支(借入と返済の差引) |
| B24 | =B19+B23 | 当月収支 |
| B25 | =B3+B24 | 翌月繰越 = 月末の口座残高 |
手順3:C列以降に12ヶ月分コピーする
C3に =B25(前月の繰越を引き継ぐ)と入力し、B列の数式ごとC列に貼り付け。あとはC列を選択して右に12ヶ月分ドラッグコピーすれば完成です。B3(初月の前月繰越)には、今の口座残高の実額を入れてください。
「支払利息」は経常支出、「元金の返済」は財務支出に分けています。利息は経費ですが、元金の返済は経費ではないからです。ここを混ぜると、後でPLと突き合わせたときに数字が合わなくなります。公庫の月次返済額を入れるときは、返済予定表を見て利息分と元金分に分けて入力してください。
予算(計画値)の作り方:数字はこの順番で埋める
テンプレができたら、次は中身です。予算の数字は①売上を入金に変換する → ②変動費を売上に連動させる → ③固定費を契約書から拾う → ④忘れがちな4項目を足す、の順番で作ります。
①売上予測を「入金予測」に変換する
まず月ごとの売上予測を用意します(創業計画書を作った人はその数字でOK)。ただし、売上の数字をそのまま収入の行に入れてはいけません。自分の商売の「回収サイト」に合わせてズラします。
| 回収の型 | 該当する業種の例 | 変換ルール |
|---|---|---|
| 現金商売型 | 飲食・小売・美容・整体 | 売上の当月に「現金売上」へ。ただしキャッシュレス分は入金が数日〜1ヶ月遅れるので、決済会社の入金サイクルを確認して按分する |
| 掛売り型 | BtoBサービス・建設・製造・卸 | 売上月の1〜2ヶ月後に「売掛金回収」へ。取引先ごとの支払条件(月末締め翌月末払い等)どおりにズラす |
| ストック型 | サブスク・教室・保守契約 | 会員数×単価を毎月の「現金売上」または「売掛金回収」へ。解約率を月2〜5%見込んで会員数を減らしていく |
掛売り型の人は、ここが資金繰り表の肝です。「3月売上300万円」は資金繰り表では「5月の売掛金回収300万円」になります。売上が伸びる局面ほど入金は後ろにいるので、成長期こそ現金が減ることが表の上で見えるはずです。
②変動費:売上に率を掛ける
仕入・外注費・材料費は売上に連動するので、「売上×原価率」で作ります。飲食なら売上の30〜35%、建設の外注中心なら60〜70%など、自分の見積の実態から率を決めてください。注意点は1つ、支払のタイミングも売上と同様にズラすことです。現金仕入れなら当月、買掛なら翌月に入れます。
③固定費:契約書と請求書から拾う
家賃・リース・通信・保険・給与は、予測ではなく契約書に書いてある実額を入れます。ここに想像の数字を入れる必要はゼロです。自分の生活費(個人事業なら事業主貸、法人なら役員報酬)も必ず人件費の行に入れてください。ここを空欄にした資金繰り表は、確実に楽観に倒れます。
④忘れがちな4項目を足す
予算が甘くなる原因の大半は、毎月発生しない支出の入れ忘れです。以下の4つを該当月に必ず入れてください。
| 項目 | 発生タイミング | 目安 |
|---|---|---|
| 消費税の納付 | 決算後2ヶ月以内(中間納付あり) | 課税事業者なら売上の数%規模。最大の資金繰りキラー |
| 社会保険料・住民税 | 毎月+賞与時 | 給与の約15%(会社負担分) |
| 賞与・繁忙期の増員 | 夏・冬 | 払う予定があるなら満額を該当月へ |
| 設備の更新・修繕 | 不定期 | 年1回、まとまった額を仮置きしておく |
ヨリミチ珈琲の田中さん(架空の事例)は現金商売なので、資金繰りは楽なはずでした。実際、開業初年度の月次はずっとプラス。しかし2年目の6月、初めての消費税納付と労働保険の年度更新が同じ月に重なり、その月だけ支出が通常月の1.7倍になりました。
田中さんは資金繰り表を作っていたので、この「6月の山」は前年の秋から見えていました。対応は単純で、毎月の翌月繰越から3万円ずつを「納税用」として別口座に移しただけ。予算段階で山が見えていれば、対策は積立でも借入でも選べます。見えていなければ、山が来た月に慌てるだけです。
予算列の最後に:翌月繰越の行を12ヶ月分眺める
12ヶ月分の予算を入れたら、25行目(翌月繰越)を左から右に眺めてください。見るポイントは2つだけです。
実績の入力:月初10分、通帳ベースで
予算を作ったら、運用フェーズです。やり方はシンプルにしてください。凝った運用は3ヶ月で続かなくなります。
シートは「予算」と「実績」の2枚に分ける
作った予算シートを丸ごとコピーして「実績」シートを作ります。1枚のシートに予算列と実績列を交互に並べる方式もありますが、列がズレて数式が壊れる事故が多いので、シート2枚方式を推奨します。見比べたければ、実績シートの下に =実績のセル-予算シートのセル で差異行を足せば十分です。
入力は月初に、通帳(口座明細)だけを見て
- 月初の10分で、前月の口座明細を上から順に見る
- 入金は「現金売上/売掛金回収」に、出金は該当の支出行に足していく。1円単位で合わせなくていい。千円単位で十分
- 実績シートの「翌月繰越」が実際の月末残高と大きくズレていないか確認(ズレていたら拾い漏れがある)
- 予算との差が±10%を超えた項目だけ、理由を1行メモする(例:「回収遅れ1件、○○社、今月入金予定」)
ポイントは最後の1つです。全項目の差異を分析する必要はありません。10%超の項目の理由だけ言語化できていれば、経営判断には十分です。そして差異の理由が「入金遅れ」なら回収の問題、「売上未達」なら営業の問題、「支出超過」なら見積の問題と、打ち手の担当が変わります。資金繰り表は、どこに問題があるかを切り分けるための計器です。
残高がいくらを切ったら動くか
実績を回しはじめたら、行動基準をあらかじめ決めておきます。目安は以下です。
| 翌月繰越の水準 | 状態 | やること |
|---|---|---|
| 月商の2ヶ月分以上 | 安全圏 | 通常運転。余剰は納税用の積立へ |
| 月商の1〜2ヶ月分 | 注意 | 3ヶ月先までの予算を見直し、山谷を再確認 |
| 月商の1ヶ月分未満 | 要行動 | この時点で金融機関に相談。残高が尽きてからの融資相談は間に合わない |
融資は申込から着金まで、公庫でも1〜1.5ヶ月かかります。「残高が減ってきたら借りる」ではなく「減る予定が表に見えたら借りる」が正しい順番です。資金繰り表を12ヶ月先まで回している人だけが、この先回りができます。
営業計画(売上の作り方)はこの表に入れない
「売上予測の精度を上げるために、営業計画も同じ表に入れるべきか」という質問をよく受けます。答えは入れないです。理由は2つあります。
1つ目は、役割が違うからです。資金繰り表は「決まった売上予測を現金の動きに変換して、残高を監視する」ための計器です。一方、営業計画は「その売上予測をどう実現するか」を作る側の話で、商談数・成約率・単価という別の変数で動きます。計器と操縦桿を同じ紙に書くと、どちらも中途半端になります。
2つ目は、更新頻度が違うからです。資金繰り表は月1回の定点観測、営業活動は週次で動きます。混ぜると「毎週触る重いシート」が生まれて、月次の資金繰り更新ごと止まります。
営業計画は別シート(別ファイルでもよい)で作り、そこで出た売上予測の「着地見込み」だけを、月1回、資金繰り表の売上予測に反映する。接続点はこの1本だけにしてください。
よくある質問
通常時は月次で十分です。日繰り表(日次の資金繰り表)が必要になるのは、残高が月商1ヶ月分を切って、月の中での支払日と入金日の順番が生死を分ける局面だけです。逆に言えば、日繰り表を作らざるを得ない状態になる前に、月次の表で手を打つのが本来の使い方です。
会計ソフトが自動で作れるのは「過去の実績」までです。資金繰り表の価値の8割は未来12ヶ月の予算側にあります。売上予測・入金サイト・納税月の山を将来に向かって置けるのは自分だけなので、実績の転記は会計ソフトを参照しつつ、予算は自分の手で作ってください。
構成としては問題ありません。公庫や保証協会の様式も「経常収支・財務収支・翌月繰越」という骨格は同じです。金融機関から指定様式を渡された場合はそちらに転記すれば済みますし、この表を普段から回している事実自体が、面談での説明力になります。
まとめ:作るのは5分、効くのは12ヶ月先
- テンプレは25行・全業種共通。A列に貼り付け→数式6本で完成
- 予算は「売上を入金に変換」から。回収サイトを無視した表は嘘をつく
- 消費税・社保・賞与・修繕の4項目を該当月に置く。山は事前に見えていれば怖くない
- 実績は月初10分・通帳ベース・千円単位。差異±10%超だけ理由をメモ
- 翌月繰越が月商1ヶ月分を切る予定が見えたら、その時点で金融機関へ
- 営業計画は混ぜない。着地見込みを月1回反映するだけ
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