創業融資の通帳の作り方
創業融資の通帳の作り方|審査担当が見ている「お金の流れ」を実例で解説
創業融資の面談で最初に開かれるのは、事業計画書ではなく通帳です。決算書という「実績」がない創業融資では、通帳があなたの計画性と誠実さを示す、ほぼ唯一の客観的な証拠になります。何をどう貯めればいいのか、逆に何をやると一発でアウトになるのかを、良い例・悪い例のビジュアルつきで解説します。
- 通帳で見られているのは「残高の多さ」ではなく「貯め方」。同じ100万円でも、毎月コツコツ貯めた跡があるかどうかで評価がまったく変わる
- 「見せ金」(一時的に借りて残高を膨らませる行為)は100%見抜かれる。振込元と入出金のタイミングを見れば、担当者には一瞬で分かる
- 提出を求められるのは直近6ヶ月〜1年分。裏を返せば、今日から半年あれば「理想の通帳」は十分に作れる
なぜ通帳を見せなければならないのか
創業融資は、既存の事業融資と違って参照できる決算書がありません。担当者は「この人にお金を貸して、本当に返してもらえるのか」を、創業計画書という未来の予測だけで判断しなければならない。そこで唯一の物証として使われるのが、申込者個人の通帳です。
面談では、日本政策金融公庫から指定された期間(多くは直近6ヶ月〜1年分)の通帳原本の提示を求められます。担当者はここから、主に3つのことを読み取っています。
| チェック項目 | 担当者が知りたいこと |
|---|---|
| ①自己資金の有無・貯め方 | 創業計画書に書いた自己資金は本当に存在するか。いつ頃から、どうやって貯めてきたか |
| ②日々の支払い状況 | 浪費癖はないか。家賃・カード引落などが遅れなく処理されているか |
| ③既存の借入・返済状況 | 他社からの借入があるか。返済が遅延なく続いているか |
つまり通帳は「お金があるかどうか」の証明書ではなく、あなたという経営者の計画性と生活の規律を映す鏡として見られています。
通帳リーディング|良い例・悪い例を実際に見比べる
ここからは、実際の審査でチェックされているポイントが伝わるよう、通帳ページを再現したビジュアルで比較します(※実在の通帳画像ではなく、審査の着眼点を可視化した再現イメージです)。
NG例:三浦さんの通帳(見せ金を疑われたケース)
| 年月日 | お摘要 | お支払金額 | お預り金額 | 差引残高 |
|---|---|---|---|---|
| 03/02 | 給与振込 カ)フンド | – | 220,000 | 458,600 |
| 03/28 | 口座振替 電気料金 | 8,400 | – | 450,200 |
| 04/05 | 給与振込 カ)フンド | – | 220,000 | 670,200 |
| 04/20 | カード引落 | 52,000 | – | 618,200 |
| 05/14 | 振込 スズキ タロウ | – | 1,500,000 | 2,118,200 |
| 05/18 | 引出(ATM) | 1,480,000 | – | 638,200 |
| 05/25 | 給与振込 カ)フンド | – | 220,000 | 858,200 |
振込元が事業と無関係な個人名で、入金からわずか4日でほぼ同額を引き出している——これは典型的な「見せ金」のパターンです。面談当日だけ残高を大きく見せて、通過後すぐに返済したように見えるため、担当者はこの動きを一目で疑います。
OK例:藤井さんの通帳(評価されたケース)
| 年月日 | お摘要 | お支払金額 | お預り金額 | 差引残高 |
|---|---|---|---|---|
| 03/02 | 給与振込 カ)フンド | – | 245,000 | 1,204,300 |
| 03/06 | 積立振替 つみたて定期 | 30,000 | – | 1,174,300 |
| 03/25 | 口座振替 家賃 | 68,000 | – | 1,106,300 |
| 04/02 | 給与振込 カ)フンド | – | 245,000 | 1,351,300 |
| 04/06 | 積立振替 つみたて定期 | 30,000 | – | 1,321,300 |
| 05/02 | 給与振込 カ)フンド | – | 245,000 | 1,566,300 |
| 05/06 | 積立振替 つみたて定期 | 30,000 | – | 1,536,300 |
| 05/20 | 賞与振込 カ)フンド | – | 180,000 | 1,716,300 |
毎月同じ勤務先からの給与、同じ日・同じ金額の自動積立、そして賞与も振込元が明記されている——すべての入出金の出所が説明できる状態です。金額の大小より、この「再現性」が信用につながります。
「いくら貯めたか」より「どう貯めたか」。同じ150万円でも、8ヶ月かけて給与から積み立てた150万円と、面談直前に一括で振り込まれた150万円では、評価がまったく別物になります。
見せ金はなぜ一瞬でバレるのか
「一時的に親族や知人からお金を借りて、面談時だけ残高を多く見せる」——いわゆる見せ金は、審査担当者に必ず見抜かれます。理由は単純で、通帳に残る痕跡がわかりやすすぎるからです。
| 見せ金が疑われる典型パターン | |
| 1 | 面談の直前(1〜2ヶ月以内)に、それまでにない大金が一度だけ入金される |
| 2 | 振込元が「個人名」で、事業や勤務先との関係が説明できない |
| 3 | 入金からほどなくして、ほぼ同額が引き出されている、または他口座へ移動している |
| 4 | それ以前の通帳履歴に、コツコツ貯めてきた形跡が一切ない |
見せ金と判断された時点で、その融資は基本的に見送りになります。しかも一度失った信用は次回の申込にも影響するため、短期的に残高を作ろうとする発想そのものが逆効果です。なお、親族からの贈与は見せ金にはあたりません。贈与契約書を作成し、現金の手渡しではなく振込で記録を残せば、正当な自己資金として認められます。
理想の通帳を作る「逆算」タイムライン
通帳は付け焼き刃で整えられるものではありませんが、逆に言えば半年あれば十分に間に合います。申込予定日から逆算して、次の順番で動いてください。
- 6ヶ月前:事業用に使う口座を1つに決め、給与や売上の振込先をそこに統一する
- 5〜6ヶ月前:毎月一定額を自動積立に設定する。金額より「毎月同じ日・同じ額」であることが重要
- 随時:家賃・カード引落などの固定費を、残高不足で延滞させない
- 随時:親族からの資金提供がある場合は、その都度、贈与契約書と振込記録をセットで残す
- 1ヶ月前:直前の大きな入出金は避ける。急な出費が必要な場合は理由を説明できるよう領収書等を保管しておく
- 申込直前:公庫から指定された通帳原本(本人名義・必要に応じて配偶者名義)をすべて準備する
自己資金として認められるお金・認められないお金
| 認められやすいもの | |
| OK | 給与・事業収入からコツコツ貯めた預金(本人名義) |
| OK | 退職金・賞与(振込記録があり、出所が明確なもの) |
| OK | 親族からの贈与(贈与契約書+振込での資金移動) |
| OK | 配偶者名義の預金(同一生計であることを合理的に説明できる場合) |
| OK | 不要な資産(株式・保険等)の売却益(客観的な証明書類つき) |
| 認められにくいもの | |
| NG | タンス預金(通帳の履歴がなく、貯めた過程を証明できない) |
| NG | 出所不明の入金(振込元・理由を説明できないもの) |
| NG | カードローン・消費者金融等、返済義務のある借入金 |
| NG | 知人からの一時的な借入(見せ金と判断される) |
よくある質問
美容師として8年勤務してきた藤井さん(30代)は、開業を決めた当初、通帳には貯金がほとんどありませんでした。面談の8ヶ月前から、給与口座を1つに統一し、毎月3万円を自動積立に設定。賞与が出た月は振込記録が残る形でそのまま自己資金に組み入れました。結果、自己資金として認められた額は当初の想定より少なかったものの、「計画的に準備してきた」という一点が評価され、希望額に近い融資を受けることができました。
本記事の内容は2026年7月時点の情報に基づきます。融資の可否や自己資金の評価は、事業内容・金融機関・個別の状況により異なります。正確な情報は日本政策金融公庫の公式サイト、または金融機関窓口でご確認ください。本記事に登場する「三浦さん」「藤井さん」は、解説のためにfundoが作成した架空の事例です。