ブログ 資金調達

創業計画書の「売上根拠」、審査担当はここしか見ていない

fundo編集部 ·
資金調達|事業計画書

事業計画書の中で、審査担当者が一番長くペンを止めるページはどこか。2,000件以上の面談を通じて見てきた答えは、いつも同じです。売上計画のページ。会社概要も市場調査も競合分析も、正直そこそこの出来で通ります。でも売上根拠だけは、甘いと他がどれだけ整っていても差し戻されます。ここで何を見られているのかを、実例つきで分解します。

この記事の結論
  • 売上根拠が甘いと、他のページの出来に関係なく計画書全体が疑われる。理由は、これだけが返済原資に直結する唯一の定量項目だから。
  • 「客単価×客数×日数」の3点だけでは足りない。審査担当者が見ているのは、その客数がどこから出てきたかの一段階手前。
  • 一次データ(自分の足で取った数字)が入っているかどうかが、通る売上根拠と落ちる売上根拠の分岐点。お金はかからない。

なぜ「売上根拠」だけがそこまで見られるのか

創業融資には決算書がありません。過去の実績という判断材料がないので、審査担当者の手元にあるのは、あなたが書いた計画書だけです。その中でも会社概要・市場調査・競合分析は、正直なところ「ちゃんと調べたかどうか」という定性的な評価にとどまります。多少粗くても、致命傷にはなりにくい。

一方で売上計画は違います。ここで出した数字が、そのまま返済シミュレーションの入力値になる。「この事業は、本当にこの通りにお金を生むのか」という一点を、審査担当者は自分の上司に説明できる形で稟議書に書かなければなりません。だから他のページ以上に、数字の出どころまで見ます。会社概要のページで多少甘いことを書いても流されますが、売上計画のページで「初年度売上1,450万円」とだけ書いてあると、そこで手が止まります。

POINT

「審査担当はここしか見ていない」は、もちろん誇張です。他のページも読まれます。ただ実務上、合否を左右する情報量の8割はこの1ページに集約されると考えて計画書を作ると、優先順位を間違えません。時間が足りないなら、まず売上計画に使ってください。

NGパターン:「売上根拠」に見えて、実は「願望」でしかないもの

売上計画で落ちる書き方には、驚くほど共通のパターンがあります。金額そのものではなく、分解の粗さが問題です。以下、駅前のコーヒースタンド「ヨリミチ珈琲」(架空の事例)を使って、NGとOKを並べます。

NoNG(願望)OK(根拠)
1初年度売上 1,450万円客単価650円 × 1日100杯 × 月26日 × 12ヵ月
2開店初月から満額100杯で計画60杯からスタートし、12ヵ月かけて100杯へ逓増
3「口コミで自然に集客できる」試飲会31名申込・SNSフォロワー1,200人を初期母集団と明記
4「コーヒー市場は◯兆円あるので0.1%取れれば十分」駅乗降客数21,000人×西口通過40%×購入習慣35%×獲得目標3.4%

NG側に共通しているのは、数字の後ろに「なぜその数字なのか」がないことです。1,450万円という金額そのものは、根拠さえあれば妥当な数字かもしれません。でも根拠が書かれていない時点で、審査担当者からは「都合のいい数字を置いただけ」に見えます。

否決ではなく「減額」を招くフレーズ

売上根拠が甘いとき、審査担当者は必ずしも計画書を突き返すわけではありません。もっと静かなことが起きます。提示された数字を自分の中で割り引いて、希望額より少ない金額で稟議を通す。これが減額です。否決より気づきにくく、本人は「無事に通った」と思っていても、本来もらえたはずの金額との差が、後々の資金繰りを圧迫します。実際によく見かけるフレーズを並べます。

No減額を招くフレーズ審査担当の心の中
1「近隣に競合カフェがなく、集客には困らない見込みです」競合がいないのは需要が薄いからでは、と逆に読まれる
2「知人・友人からの応援もあり、初月から高稼働を見込んでいます」知人需要は一過性。継続性なしと判断し、初期数ヵ月分を割り引く
3「近隣にオフィスが多く、平日需要は堅調です」(裏付け数字なし)定性的な表現は検証不能。業種平均値まで客数を引き下げて再計算
4「SNSで話題化すれば集客は一気に伸びます」再現性のない上振れ前提と判断し、この上乗せ分を計画からまるごと除外
5「原材料費の高騰は考慮していません」原価率を保守的に引き直し、返済余力を下方修正 → 融資額そのものを圧縮
POINT

減額は「否決の一歩手前」というより、審査担当者が自分の中で帳尻を合わせて通してくれている状態に近いです。本人が気づかないまま満額を逃しているケースは珍しくありません。上のフレーズが自分の計画書に紛れていないか、提出前に一度見直してください。

「客数」の根拠を、どこまで遡って書くか

売上根拠で一番効くのは、客単価でも日数でもなく客数の作り方です。ヨリミチ珈琲の「1日100杯」がどう組み立てられているか、遡って見てみます。

段階数字出所
駅乗降客数 21,000人/日鉄道会社の公開データ
西口通過率 40%平日5日間・朝の2時間、自分で立って数えた現地カウント
コーヒー購入習慣 35%駅前で配った自社アンケート(120名回答)
獲得目標 3.4%①〜③を掛け合わせた母集団に対する自社の目標値
→ 21,000×40%×35%×3.4% ≒ 1日100杯

①は誰でも取れる公開データですが、②と③は自分の足で取りに行った数字です。ここに費用は一円もかかっていません。かかったのは時間だけです。そして、ここまで段階を分解して書く起業家はほとんどいません。だからこそ、これをやるだけで計画書の説得力が一段変わります。

朝の2時間、5日間、駅の前に立つ。これだけで通過率という「誰も持っていない一次データ」が手に入ります。天気の悪い日と良い日を両方含めるとなお良いです。面談で「その数字はどこから?」と聞かれたときに、「自分で数えました」と即答できる。これが一番強い返答です。逆に「だいたいこれくらいかと思います」は、その場で計画全体の信頼を落とします。

「積み上げ」と「逓増」、2つを外さない

立ち上がりカーブを描く

開店初月から満額稼働で組んだ計画は、一発で疑われます。どんな事業も立ち上がりには時間がかかるからです。ヨリミチ珈琲の場合、初月60杯→12ヵ月かけて100杯へという逓増カーブを引いています。右肩上がりの角度そのものより、「なぜその角度なのか」(認知の広がり方、リピート化の速度)を一言添えられるかが見られます。

ゼロから積む数字と、すでにある数字を分ける

ヨリミチ珈琲の売上には、店頭販売のほかに定期便があります。この定期便の見込み客は、代表がイベント出店時代に豆を600袋買った既存の顧客層です。これから開拓する数字と、すでに関係がある数字を同じ扱いで合算しない。分けて書くことで、「どこまでが固い数字で、どこからが伸びしろなのか」が審査担当者に伝わります。BtoBや士業のように顧客が特定できる事業であれば、「既存客A社から打診済み」の一文がそのまま最強の売上根拠になります。

売上根拠チェックリスト

  • 自分で集めたアンケート・現地カウントなど、一次データが最低1つ入っている
  • 客数の根拠に「なぜその数字なのか」の出所(公的統計/実地調査/自社アンケート)が明記されている
  • 初月・初年度の数字が満額ではなく、逓増カーブになっている
  • 客単価に根拠がある(メニュー構成・想定客層の購買データなど)
  • 既存の実績(すでに売った・買われた事実)と、これから獲得する数字が分けて書かれている
  • 売上根拠の数字が、商圏分析・プロモーション費用など他ページの数字と矛盾していない

よくある質問

Q1 ── 客単価の決め方客単価はどう根拠づければいいですか?
落ちる書き方:「業界平均を参考に650円としました」

業界平均は自分の店の数字ではありません。なぜ自分の店がその単価になるのかが説明されていないため、根拠として弱いと判断されます。

通る書き方:「ドリップ450円・ラテ550円・豆売り800円のメニュー構成比を想定し、加重平均で客単価650円」
Q2 ── 立ち上がり期の見せ方開店直後の売上をどう計画すればいいですか?
落ちる書き方:初月から年間平均の100杯で固定

立ち上がり期間を考慮していない計画は、実態を見ていないと判断され、他の数字まで疑われます。

通る書き方:「初月60杯→3ヵ月目80杯→12ヵ月目100杯」と段階を明示し、各段階の根拠(認知拡大・リピート化)を一言添える

まとめ:審査担当者の目線に立つ、というだけの話

売上根拠に秘密のテクニックはありません。差がつくのは、駅前で数えたか、アンケートを取ったか、既存の実績とこれからの数字を分けて書いたか。審査担当者が上司に説明できる形で数字を渡せているか、それだけです。今週末、あなたの事業の「客数」を、どこまで分解して説明できるか一度書き出してみてください。

NEXT STEP
売上根拠、一緒に固めませんか

fundoでは、2,000件以上の面談実績をもとに、事業計画書の売上根拠の作り込みから金融機関対応まで伴走します。まずは無料相談で、現在地を整理するところから。

無料で相談する

※本記事の「ヨリミチ珈琲」は、解説のためにfundoが作成した架空の事例です。登場する人物・店舗・数値はすべて架空ですが、審査で見られる観点は実際の融資支援で扱っている内容に基づいています。実際の計画書作成時は、ご自身の事業に即した一次データを取得のうえ数値をご確認ください。

fundo Content Map

すべてのコンテンツ

fundoが提供する5種類の読み物コンテンツと、4つのサービスメニュー。