事業計画書の書き方|創業融資に通る15枚をカフェ事業で全公開【添削付き】

事業計画書のテンプレートは、検索すれば無限に出てきます。それでも融資が通らない人が後を絶たないのは、テンプレートの「枠」だけ手に入れて、中に何を書けば審査担当者が納得するのかを誰も教えてくれないからです。
だからこの記事では、枠の解説をやめました。代わりに、架空のコーヒースタンド1社の事業計画書・全16スライドを、表紙から収支計画まで1枚残らず公開します。各スライドには、私たちが実際の融資支援で入れている添削コメントをそのまま載せています。どこを見て、何を直すのか。2,000件以上の起業家・経営者との面談で磨いてきた目線です。
読み終わる頃には、「で、自分は何から手をつければいいのか」まで分かる状態を目指します。長い記事です。ブックマークして、書きながら戻ってきてください。
今回の架空事例:駅前コーヒースタンド「ヨリミチ珈琲」
事例の設定(すべて架空です)
事業:駅前4坪のテイクアウト特化コーヒースタンド+自家焙煎豆の定期便・オフィス卸
代表:大手カフェチェーンで店長5年(損益管理を経験)、自家焙煎歴3年、週末イベント出店20回
調達:必要資金950万円(自己資金250万円+日本政策金融公庫の創業融資700万円)
計画:2年目に単年黒字化、3年目に累積黒字化
コーヒースタンドを選んだのは、事業の構造をイメージしやすいかなぁと思ったからです。あなたの事業が飲食でなくても問題ありません。金融機関に出す事業計画書の骨格は、業種が変わっても1つしかないからです。
全体像:5部構成・15枚。順番も変えないほうがよいです

15枚の内訳はこうです。
| 枚数 | 章 | スライド |
|---|---|---|
| 1 | - | 表紙 |
| 2〜4 | 1. 会社概要 | 設立の目的/代表者経歴/基本情報・協力体制 |
| 5〜11 | 2. 事業概要 | コンセプト/ビジネスモデル/市場調査/商圏分析/競合調査/戦略方針/プロモーション |
| 12 | 3. 売上計画 | 単価×数量の積み上げ |
| 13〜14 | 4. 想定資金需要 | 必要資金と調達/人員計画 |
| 15 | 5. 収支計画 | 5ヵ年収支 |
順番に意味があります。「誰が(1章)→何をやって(2章)→いくら売れて(3章)→いくら必要で(4章)→いつ黒字になるか(5章)」。審査担当者が稟議書を書く順番と同じだからです。相手が書類を書きやすい順に情報を渡す。それだけで通過率は変わります。
事業計画書は「自分の夢を語る書類」ではなく、「審査担当者が上司を説得するための材料集」です。読み手は金融機関の中の人。この前提を外すと、何ページ書いても通りません。
スライド1:表紙
表紙に凝る必要はありません。書くのは「事業計画書」「用途(創業融資申込用)」「商号」「代表者名」「日付」の5点だけ。日付を入れ忘れる人が意外に多いのですが、金融機関は書類を版数で管理するので、日付のない書類は事務的に扱いづらい。それだけで雑な印象がつきます。
1章:会社概要(スライド2〜4)── 審査担当者は「事業」より先に「人」を見る
創業融資には決算書がありません。判断材料は、あなたという人間の過去と、開業までに何を準備したかだけ。だから最初の3枚は、事業の話ではなくあなた自身が信用に足る証拠を並べます。
スライド2:設立の目的──決意表明から入らない
よくある失敗が、「コーヒーで地域を笑顔にしたい」のような決意表明から入ることです。審査担当者は決意の強さを測る機械を持っていません。測れるのは事実だけです。
このスライドの構造は、①自分で取ったデータ(120名アンケート)→ ②定量的な課題(74%・68%)→ ③自分の原体験 → ④だから自分がやる。決意の言葉は最後の一行だけで、それ以外は全部事実です。アンケートは費用ゼロ。駅前で配る、SNSで集める、知人のオフィスに頼む。やるかどうかだけの差です。
スライド3:代表者経歴──「好き」ではなく「数字を扱えた証明」
経歴は履歴書の転記ではありません。審査担当者が探しているのは「この経歴なら、この事業を回せそうだ」という接続点です。この事例で効いているのは2つ。
- 店長5年・月商800万円の損益管理。「コーヒーが好き」な人は無数にいますが、店の数字を5年見てきた人は多くない。創業融資では、この差が事実上の与信になります。
- イベント出店20回・豆600袋の販売実績。小さくても「すでに売ったことがある」は最強の材料です。開業前にできるテストマーケティングとして、これ以上のものはありません。
日本政策金融公庫の創業計画書でも、関連業務の経験年数は明確な評価項目です。未経験分野での創業は、それだけで審査のハードルが一段上がると思ってください。
スライド4:基本情報・協力体制──「ひとり起業」の不安を先回りで消す
基本情報は淡々と埋めるだけですが、右側の「協力体制」が仕事をします。審査側から見たひとり起業の不安は、「この人が倒れたら終わり」「数字の管理ができるのか」「仕入は安定するのか」の3つ。税理士・人員・仕入先の3点が確保済みと書くだけで、その不安を先回りで消せます。とくに仕入先との取引実績3年は、続けてきた事実そのものが信用情報です。
2章:事業概要(スライド5〜11)── 計画書の心臓部。7枚使って「儲かる構造」を証明する
2章は枚数が一番多い章です。コンセプト→ビジネスモデル→市場→商圏→競合→戦略→プロモーションの7枚で、「この事業は構造的に儲かる」を多面から証明します。1枚ずつ見ます。
スライド5:コンセプト──一文で言えなければ、まだ固まっていない
「誰の・何の課題を・どう解決する」が一文で言えれば合格です。この事例なら「通勤の90秒で、スペシャルティを日常に。」。注目してほしいのは、3つの箱の中身が前のスライド(アンケート74%)と後のスライド(商圏2.1万人)の数字につながっていること。事業計画書は1枚ごとの出来ではなく、全体で一つの証明になっているかで評価されます。
スライド6(追加):顧客分析──「誰に売るか」の解像度が、計画書全体の信頼を決める
顧客分析は、多くの計画書で最も薄い章です。「30〜50代の会社員」で止まっていては、審査担当者には何も伝わっていません。属性・行動パターン・困っていることの3点がセットで書けて初めて、「この人は売る相手を分かっている」と読まれます。
この事例で重要なのは右側の「購買の証拠」の欄です。
- カフェのような不特定多数が相手の業態:実際の顧客名は書けません。だから「SNS告知のみで試飲会に31名申込」「アンケートで74%が不満」という行動データで代替します。
- BtoB・コーチング・士業・サービス業など顧客が特定できる業態:「法人2社から打診済み」は計画書の中で最も強い一文になります。実名でなくても「前職の顧客から相談あり」「知人の会社から引き合いがある」で十分です。その売上はほぼ確定した数字として、売上計画の中で他と分けて扱えます。
「既存顧客がいる」は創業融資の計画書における最強の武器です。審査担当者の見る目が変わります。まだいない場合でも、開業前にテスト販売・モニター募集・試飲会などで「買った人の実績」を作ることに時間とお金を使ってください。計画書を磨く時間より、先にそちらです。
スライド7:ビジネスモデル──文章で書かない。お金の流れる絵にする
登場人物と、お金・サービスの矢印を1枚の図にします。審査担当者は1日に何件も書類を見るので、文章を読み込まないと収益構造がわからない計画書はその時点で後回しです。
添削ポイントは2つ。矢印の横に単価×数量まで書くこと(650円×100杯×26日)。これでモデル図と売上計画が直結し、3章の数字に説得力が出ます。そして日銭(店頭)+積み上がる月額(定期便・卸)の二段構え。フロー収益とストック収益が1枚で見えると、収益の安定性まで一目で伝わります。カフェでもSaaSでも、この構造の作り方は同じです。
スライド8:市場調査──データはどこから取るか
「市場調査のやり方が分からない」という相談は多いですが、無料で取れる出所は3つ覚えれば足ります。
- 業界団体の統計(この事例なら全日本コーヒー協会)。たいていの業界に「○○協会」があり、統計を公開しています。
- e-Stat(政府統計)。総務省の家計調査を見れば、品目ごとの世帯支出が分かります。
- 日本政策金融公庫の業種別データ。小企業の経営指標など、融資の文脈と相性のいいデータが揃っています。
そして出所を必ず明記する。出所のない数字は、数字ではなくポエムとして扱われます。「ネット記事によると」は出所になりません。グラフは元データの数字を書き写して自作してください。スクリーンショットの貼り付けは著作権の問題に加えて、「自分で数字を触っていない」ことが透けます。
スライド9:商圏分析──小規模事業は「国内市場○兆円」を語らない
このスライドが、15枚の中で一番真似してほしい1枚です。売上の核になる「1日100杯」を、駅乗降客数21,000人 → 西口通過40% → コーヒー購入習慣35% → 獲得目標3.4%と段階的に逆算しています。
各段階に出所があるのがミソです。乗降客数は鉄道会社の公開データ。通過率40%は平日5日間、朝の2時間、自分で立って数えた現地カウント。購入習慣35%は自社アンケート。費用は一円もかかっていません。そして、ここまでやる起業家はほとんどいません。だからやれば、それだけで上位数%の計画書になります。
市場規模の考え方は事業の大きさで変わります。VC向けの資料ならTAM/SAM/SOMで大きな絵を描きますが、創業融資で審査側が知りたいのは「あなたの店の前を何人通って、何人が買うのか」。小さく具体的なほうが強いのです。
スライド10:競合調査──敵を貶める資料ではなく、空いている席を示す資料
競合調査のやり方も単純です。①商圏内の競合店で実際に買う(提供時間を計る)、②Google マップの口コミを全件読んで不満点を分類する。この2つで比較表が埋まります。「大手チェーンは朝の行列10分」「喫茶店は提供5分超」が実測値である点が効いています。口コミの引用より、自分で測った数字のほうが強い。
そして競合調査の目的を間違えないこと。競合をこき下ろす資料ではなく、「埋まっている席と空いている席」を示す資料です。コンビニの安さと戦わない。「速いのに本格」という空席を取る。それが一目で分かれば合格です。融資面談では「競合のことをどこまで知っているか」が必ず聞かれます。この1枚があるかないかで、面談の景色が変わります。
スライド11:戦略方針──ポジショニングマップの軸は「自分が勝てる軸」でいい
2軸マップの軸選びに正解はありません。自分だけが右上に入る軸を選んでいい。ただし条件が1つ。「なぜその右上が空いているのか(=両立が難しい理由)」と「自分はどう成立させるのか」をセットで書くことです。
この事例では、速さと本格の両立が難しいからこそ空席であり、それを「メニュー7品への絞り込み」「事前注文アプリ」「閉店後の店内焙煎」という具体的な仕組みで成立させています。仕組みの裏付けがないポジショニングマップは、ただの願望の図解です。
スライド12:プロモーション戦略──集客は開店前から始まっている
プロモーションのスライドは、施策名を並べるだけだと願望リストになります。施策ごとに費用・実行の裏付け・狙う数字の3点をセットで書いてください。この事例なら「チラシ3,000枚=12万円・ビル管理会社の配布許可取得済」「豆サンプル配布→定期便 新規8件/月」。
もう1つ。すでに持っている資産は必ず書くこと。SNSフォロワー1,200人、イベント出店時代の顧客。ゼロから集客する計画と、初月から「知られている状態」で開ける計画では、立ち上がりの確度がまったく違って見えます。そして下部の注記のとおり、ここに書いた広告宣伝費は収支計画の経費と一円単位で一致させること。スライド間で数字がズレた瞬間、計画書全体の信頼が崩れます。
3章:売上計画(スライド12)── 願望と積み上げの分かれ目
売上計画で審査担当者が見ているのは、金額の大小ではなく分解の細かさです。
- NG:「初年度売上 1,450万円」(金額がポンと置かれているだけ)
- OK:「客単価650円 × 1日100杯 × 月26日。100杯の根拠は商圏分析(スライド8)」
加えて2つの工夫が入っています。1つ目は立ち上がりカーブ。開店初月から満額の計画は一発で疑われます。「60杯から始めて12ヵ月かけて100杯へ」と逓増させる。2つ目は、ゼロから積む数字と、すでにある数字の分離。定期便は出店時代に600袋買った顧客が母集団なので、確度が違う。この2つを分けて見せるだけで、計画全体の信頼度が変わります。
4章:想定資金需要(スライド13〜14)── 融資審査で最も重く見られる章
スライド14:必要資金と調達──見積書の枚数=計画の解像度
「いくら借りたいか」ではなく「何に使うか」。設備資金は品目ごとに金額と見積取得の有無まで書きます。「開業費一式600万円」と書いた時点で負けです。見積書が取れる項目は全部取る。添付できる見積の枚数が、そのまま計画の解像度として評価されます。
運転資金は月商の約3ヵ月分。「立ち上がりが計画を下回っても耐えられる原資」という位置づけを明記します。そして自己資金。250万円が「3年間の積立」である事実は、通帳で確認されます。コツコツ貯めた形跡そのものが計画性の証明です。申込直前に親から振り込まれた250万円とは、金額が同じでも評価がまったく違います(見せ金は確実にバレます。やめてください)。
スライド15:人員計画──増員の条件を黒字化に紐づける
人件費は創業期最大の固定費です。この事例の効きどころは2つ。初年度の代表月給20万円。自分の取り分から絞る姿勢は、審査担当者への何よりのメッセージです(生活できる根拠は面談で聞かれるので、家計の説明は準備しておくこと)。そして社員採用は累積黒字化(3年目)とセット。売上が立つ前に人を増やさない順序が書けていれば、それだけで「お金の使い方がわかる人」という評価になります。逆に、売上ゼロの段階から増員する計画は、それだけで返済リスクとして減点されます。
5章:収支計画(スライド15)── 黒字化の瞬間を2つ明示する
最後は5ヵ年収支。審査担当者がこの表で確認するのは、たった2点です。①単年黒字化はいつか(この事例は2年目)、②累積でいつ回収できるか(3年目)。
黒字転換が「+90万円」と控えめなのは意図的です。盛った黒字より、立ち上がりカーブと整合した小さな黒字のほうが信用されます。1年目の▲300万円も、運転資金350万円の範囲内=想定済みの赤字として読める構成になっています。
1年目から黒字の計画は、むしろ疑われます。創業期に投資せず黒字になる事業は、裏を返せば「借りる必要がない」か「数字を盛っている」かのどちらかだからです。赤字でも、構造的に黒字へ向かう道筋が見えていれば問題ありません。なお返済原資は「利益+減価償却費」で説明します。利益だけで返す計画にする必要はありません。
16枚を貫く3つの原則
全スライドを見てもらった上で、横串の原則を3つだけ置いておきます。
- 一次データが信頼をつくる。アンケート120名、現地カウント5日間、競合店での実測、出店20回。この計画書の説得力は、ほぼすべて「自分の足で取った数字」から来ています。全部無料です。やるかどうかだけ。
- スライド間で数字をつなげる。アンケート74%→コンセプト、商圏の100杯→売上計画、広告費→収支の経費、黒字化3年目→増員のタイミング。1枚ごとの出来ではなく、15枚で一つの証明になっているか。逆に1ヵ所でも数字がズレると、全体が疑われます。
- 願望を書く場所はない。決意は最後の一行だけ。施策には費用と裏付け。売上は単価×数量。黒字は控えめに。事業計画書のすべての行は「事実」か「事実から導いた計算」のどちらかであるべきです。
よくある質問
この16枚で本当に足りますか?
創業融資なら足ります。16〜20枚が目安で、それ以上は読まれません。逆にこれより薄い場合、たいてい商圏分析(スライド8)か資金使途の内訳(スライド13)が欠けています。
日本政策金融公庫の創業計画書(A3一枚)とは別物ですか?
公庫の所定様式は提出必須ですが、あれは「要約版」です。この16枚を別添資料として付けることで、所定様式の各欄に書ききれない根拠を補強できます。実務上、所定様式+別添計画書のセットが最も通りやすい組み合わせです。
パワーポイントとWord、どちらで作るべきですか?
どちらでも通ります。ただし今回見たとおり、図解(モデル図・商圏ファネル・ポジショニングマップ)が多くなるため、実務ではスライド形式のほうが作りやすく、読み手にも伝わりやすいです。私たちの支援現場でもスライド形式で統一しています。
飲食以外の業種でも、この構成でいいですか?
骨格は同じです。変わるのは中身だけ。商圏分析は、ECなら「広告経由の流入×CVR」、BtoBなら「リスト件数×アポ率×成約率」に置き換わります。「大きな市場の話ではなく、自分が取れる数字を段階的に逆算する」という原則は全業種共通です。
まとめ:型も実物も見せた。埋まらないのは「準備」の問題
16枚の型と、各スライドで審査担当者が見ているポイント、そして添削の目線まで公開しました。正直なところ、フォーマット自体に秘密はありません。差がつくのは、アンケートを取ったか、駅前で数えたか、競合店で買ったか、見積書を集めたか──つまり書く前の準備です。
テンプレートを埋めようとして手が止まる人は、書き方が分からないのではなく、事業の解像度がまだ足りていないだけです。それは恥ずかしいことではなく、この15枚を順番に埋める過程で上げていくものです。スライド2のアンケートから始めてください。今週末にできます。
事業計画書、一緒に作りませんか
fundoでは、2,000件以上の面談実績をもとに、この記事と同じ目線での事業計画書の添削・作成から金融機関対応まで伴走します。
まずは無料相談で、あなたの事業の現在地を整理するところから。
※本記事の「ヨリミチ珈琲」は、解説のためにfundoが作成した架空の事例です。登場する人物・店舗・数値はすべて架空ですが、スライド構成と添削コメントは実際の融資支援で行っている内容に基づいています。市場データの数値は説明用に簡略化しています。実際の計画書作成時は最新の統計をご確認ください。