はじめての資金調達。金融機関の融資構造を知ろう。
はじめての資金調達。
金融機関の融資構造を知ろう。
銀行・信用保証協会・日本政策金融公庫。この3者がどう絡んでいるかを知らないまま動くと、いちばん損をします。融資が「どこで決まっているのか」を、現場目線で整理します。
先に、身も蓋もない結論から言います。いい事業計画書を書くことは、ほとんど重要じゃない。少なくとも、多くの人が思っているほどには。
はじめての資金調達で、みんな計画書づくりに何週間も溶かします。でも、融資の現場で本当に効くのは、もっと単純な3つです。実績、自己資本、そしてきちんと自分の言葉で語れること。計画書はこの3つを「説明する道具」であって、それ自体が借入額を生み出すわけではありません。
とはいえ、この話には前提があります。そもそも、お金がどこで・誰の判断で出ているのかという「融資の構造」です。ここを知らずに窓口へ行くから、無駄足を踏み、足元を見られる。この記事では、その構造を一枚ずつ分解していきます。
融資の登場人物は、たった3つ
まず全体像から。創業期に関わる融資の出し手は、ざっくり3者しかいません。これだけ押さえれば十分です。
公庫だけは、別の判断軸を持っている。
ポイントは1つ。民間の銀行の融資は、ほぼ信用保証協会の意思に基づきます。創業期に銀行が「自分の腹」で貸す(=プロパー融資)ことは、まずありません。あなたが銀行員と話していても、その裏で実際にOK/NGを握っているのは保証協会だ、という構図です。
だから、2系統で攻める
ここから実務の話です。出し手は3者ですが、判断のルートは「保証協会系」と「公庫系」の2つに分かれます。そして、この2つは判断軸が別です。だから——
① 保証協会 系
銀行に申し込む → 銀行が保証協会に照会 → 保証協会がGo/Noを判断。
注意:保証協会は地域に基本1つ。銀行経由で「保証協会NG」が出たら、別の銀行に行ってもどこでもNGです。
② 公庫 系
公庫に直接申し込む。保証協会とは関係なく、公庫が自前で判断する。
だから保証協会で落ちても、公庫は別物として通る可能性がある。
逆に言えば、「銀行をたくさん回れば、どこかが貸してくれる」は半分間違いです。銀行は必ず同じ保証協会にお伺いを立てるので、保証協会がNGなら、銀行を変えても結論は同じ。回るべきは「銀行」ではなく「系統」です。
いくら借りられるのか ―― 10倍は、まずない
次に金額の話。そして大前提として忘れないでほしいのは、これは借金だということ。返す前提のお金です。
「自己資金の10倍は引ける」と言う人がいます。はっきり言って、ほぼありません。現実的な感覚は、自己資金の3倍。ここを基準に資金計画を立ててください。
ほぼ幻想。期待しない
これが現実的なライン
※ 実際の金額は審査と事業計画で決まる。
では、その3倍を引き出すには何が要るのか。答えはイントロと同じです。実績と、自己資本。この2つが、借りられる「上限額」そのものを決めます。
事業計画書は、上限を上げない。減点を防ぐもの
ここが、いちばん誤解されているところです。事業計画書は一定ちゃんと書いてあること、そして自分で説明できることが必須。これは絶対に外せません。でも——
悲しいかな、マジで実績が必要です。どれだけ計画書が美しくても、実績と自己資本という土台がなければ、上限額は伸びません。計画書の役割は「上限を上げる」ことではなく、「印象を損ねて減点されるのを防ぐ」こと。守りの書類だと考えてください。過去の支援先の方では、同じ事業計画書ですがが、実績がないときは融資がおりませんでしたが、半年ほど売上をあげて再チャレンジした際は、半年の売上と同等の600万円(資本金300万円)融資を獲得していました。
では、その計画書には何を書くか。難しく考える必要はありません。市場・競合・プロモーション、加えて収支計画と資金使途。これらがきちんと整理され、5年分くらいの絵として筋が通っていればOK。きれいな未来を盛るより、自分の口で説明できる現実的な数字を並べるほうが、はるかに効きます。
銀行選び ―― 一番頑張ってくれるところを選ぶ
系統と金額の次は、「誰に頼むか」。結論はシンプルで、あなたのために一番頑張ってくれるところを選びます。同じ保証協会案件でも、銀行担当者の本気度で、通し方も金額も変わるからです。
最初から「メインバンク」は、普通にしんどい
大手の都市銀行をいきなりメインに、というのは創業期だとまず厳しい。相手にされない、というのが正直なところです。狙うべきは別のところ。
地域の信用金庫が、一番親身に聞いてくれる
実感として、地域の信用金庫が最も親身です。創業期の小さな案件にも、ちゃんと向き合ってくれる。最初の一歩は、地元の信金から始めるのが定石です。
「誰の紹介か」で、頑張り方が変わる
そしてここが地味に効きます。同じ窓口でも、誰が紹介したかで担当者の本気度が変わる。
まとめると、融資はこの式で決まる
ここまでの話を、2本の式に圧縮します。これだけ覚えて帰ってもらえれば十分です。
つまり、計画書をいくら磨いても天井は上がらない。天井を上げるのは実績と自己資本だけ。そのうえで、普段の関係づくりと、自分の言葉での説明が、減額を防ぐ。順番を間違えないでください。
金融機関融資の、いいところ・悪いところ
最後に、そもそも金融機関から借りるという選択そのものを、フラットに整理しておきます。
いいところ
- 金利が低い(公庫・信金なら年1〜3%台が目安)
- 株式を渡さない=経営の自由を保てる
- 返済という規律が、事業の規律になる
- きちんと返せば「実績」として次につながる
- 大きな額を、現実的なコストで調達できる
悪いところ
- 返済義務がある(当たり前だが、重い)
- 実績・自己資本がないと、そもそも出ない
- 入金まで1〜2か月かかる。急ぎには向かない
- 保証・個人保証のプレッシャーがついて回る
- 断られると、普通に凹む
この記事の要点 ―― 5つの原則
計画書より、実績と自己資本。
上限額を決めるのはこの2つ。計画書は天井を上げる道具ではなく、減点を防ぐ守りの道具。
保証協会系と公庫系、2系統に出す。
判断軸が別だから、片方落ちても片方が残る。最初から両方に申し込むのが合理的。
銀行経由・保証協会NGは、どこでもNG。
銀行は必ず同じ保証協会に照会する。回るべきは「銀行」ではなく「系統」。
上限は自己資金の3倍。10倍は期待しない。
そして、これは借金。返済の見込みが立つ範囲で考える。
一番頑張ってくれる窓口を、紹介で叩く。
創業期は地元の信用金庫。商工会・地元の社長の紹介で、担当者の本気度が変わる。
「で、うちはいくら引ける?」
その答えを、一緒に出します。
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